2012年2月22日水曜日

「棚卸前だから在庫を絞れ」は大ウソ

さて、今年度も終わりが近付いてきました。毎年恒例、棚卸ですね。この時期になると薬局業界では、「棚卸前だから在庫を絞らなきゃ」とよく聞きます。

でもちょっと待ってください。
そもそも何故棚卸前だからと在庫を絞るんですか?
実は在庫を絞る必要などありません。まったくのデタラメです。

一般小売業ではどうか知りませんが、薬局業界では何故か”棚卸→在庫を絞る”は暗黙の了解になっています。

多くの薬剤師が理由をはっきり理解しないまま無理に在庫を絞り、卸は返品と急配に泣き、患者さんは欠品で迷惑を被る、という構図が全国で繰り広げられています。賢明な薬剤師諸氏におかれましては、決してそんな愚行に加担することなきよう。



理由としてよく聞くのが、「期末在庫が少ない方が税金が安く済む」
もちろん、まったくのデタラメです。

売上総利益=売上-売上原価

会社の利益(ひいては納税額)は、売上高からその売上の元となった仕入額を引いて算出されます。つまり、売れてもいない商品の原価はまったく関係ありません。単に、手元の現金が商品に化けているだけで、それによって支払う税金が増えたり減ったりはしません。


数字を入れてみましょう。
期首在庫はゼロとして、1000で仕入れた商品を1500で売る場合。

在庫を絞るなら、仕入れは1000ピッタシ。
在庫を絞らないなら、仕入れは2000とします。

前者の利益=1500-1000=500 期末在庫ゼロ
後者の利益=1500-1000=500 期末在庫1000

当然ですが、利益は同じですね。



それでも棚卸前に在庫を絞るメリットを無理矢理考えてみました。

1.数えやすい

これは確かに。しかし過度に絞る理由にはなりません。


2.決算の数字をよく見せる

期末の商品棚卸高は貸借対照表(以下B/S)に記載されていますが、現金が少なく棚卸資産(商品)が多いB/Sよりも、現金が多く棚卸資産(商品)が少ないB/Sの方が一般的には好決算です。
ただしこれは一部の上場企業に限ります。なぜなら、ほとんどの中小零細薬局の決算など誰も気にしないからです。そもそも決算を公開する義務もありません。


3.金利負担を軽減

在庫をたくさん抱えると運転資金も多く必要になり、結果的に銀行に支払う金利が増える。もちろん銀行からの借入を用いて商品を仕入れている会社に限ります。
しかし、棚卸のときに限って絞る理由にはなりませんね。そもそも薬局の支払いサイトを考えると、仕入れに借入が必要とは思えません。



やっぱり、棚卸前だからと在庫を絞る理由はないかと思います。





おそらく、「薬価改定前だから在庫を絞る」が正解ですね。なぜなら、在庫が多ければ多いほどダメージは大きくなるからです。

例えば、薬価が(加重平均値にして)5%下がるとします。在庫金額が1000万円ある薬局と2000万円ある薬局、前者は50万円の損失で、後者は100万円の損失。3/31から4/1に日付が変わるだけでこの損失。馬鹿らしい。そりゃ死ぬ気で在庫絞りますって。卸さん患者さんごめんなさいっ


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